2025.06.30

【千葉ジェッツ吉田修久SPDインタビュー】選手の特性に合わせたきめ細かいアプローチでコンディショニング

コンディショニングの方向性を総括的に決める役割を担っているのが吉田修久SPD [写真]=須田康暉
フリーのスポーツ専門編集者&ライター

 千葉ジェッツには選手のパフォーマンス向上のため、目的別にフィジカルコンディションを担当するスペシャリストが総勢7名いる。そのなかで、コンディショニングの方向性を総括的に決める役割を担っているのが吉田修久スポーツ・パフォーマンス・ディレクター(SPD)だ。※5月28日に2024-25シーズンでの契約満了がリリースされた

 これまでアメリカの強豪校や世界トップリーグの優勝チーム、Bリーグと国内外でトップアスリートの現場で培ってきた経験をもとに、吉田SPDが千葉ジェッツで実践するコンディショニングとは?

取材・文=牧野豊
写真=須田康暉

コンディショニングは選手のパフォーマンスと稼働性を上げるのが目的

――コンディショニングの概念とその重要性について、まずはお聞かせいただけますでしょうか。
吉田 コンディショニングとひと言で言っても、目的によってその内容は異なりますが、最終的には選手のパフォーマンスを上げていくこと、そして選手のアベイラビリティ(稼働性)を上げることが大きな目的です。

 ケガについては予防できる部分と不可抗力で負ってしまうケースがありますが、トレーニング、栄養摂取、睡眠、私生活の過ごし方含め、様々な角度からアプローチをして体調を整えていくことが、大きく言えば「コンディショニング」となります。

――そのなかで、千葉ジェッツのパートナーである大塚製薬の製品をどのように活用しているのか、具体例をご説明いただけますでしょうか。
吉田 栄養においては、まず五大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル)を食事で摂取することを前提として、見過ごされがちなのが運動時の水分補給と栄養補給です。その部分では『ポカリスエット』を活用しています。電解質による素早い水分吸収や糖質による栄養補給を考えると、水分補給はのどが渇く前から意識的に行うことが重要です。

 また、運動前後にタンパク質を摂取する際には『ボディメンテ ゼリー』を活用させていただいています。特に運動後には速やかなリカバリーを促したいので、タンパク質やBCAAなどのアミノ酸、糖質などのエネルギーを必要な分だけちゃんと摂っておく。あと『ボディメンテ』なら乳酸菌ですね。

 アスリートは体が強いように見えますが、激しい運動をしたあとは、実は体調を崩しやすい状態ともいわれています。それをいかにいい状態に持っていくかが重要です。

 サプリメントについては選手それぞれの体の特徴に合わせて、食事では補えない栄養素を科学的に分析・把握。そのうえで必要な栄養素を、必要な時に、必要な分だけ、『ネイチャーメイド』シリーズのなかから摂るように選手たちには勧めています。

見過ごされがちな水分補給と栄養補給にも対応 [写真]=須田康暉


――運動中の水分と糖分補給はわかりやすい例です。
吉田 30分間くらいの運動ではそれほど急に血糖値が下がってしまうことはないですが、1時間の練習、または試合中ですと、その間に栄養を摂取することは重要です。加えてミネラルをちゃんと摂取することによって、パフォーマンスの維持につなげています。

――選手の体の特徴や状態を見ながら、対応していくのですね。
吉田 できるだけパフォーマンスデータを取ろうとしていますが、すべてをデータで判断するのではなく、選手の主観的、感覚的な見方も尊重したうえでデータを活かすことが必要です。

 一例を挙げると、汗のかきやすいビッグマンが試合、練習で水分や糖分をこまめに摂らずにプレーしていたら、どんどんパフォーマンスが落ちてしまったことがありました。聞いてみたら、もう少し痩せるようにとも言われていたらしく、そちらに気を取られて、汗をかいても水分や糖分を摂取することを抑えていたという答えだったのです。

 ただ、水分摂取を控えること自体、栄養学的に間違っています。ですので、一度きちんと話をして栄養士さんの指導を受けてもらい、炭水化物などのエネルギーを摂り、水分もしっかり摂ってもらうようにしたら、パフォーマンスがいつもどおりに戻っていきました。

 このような例は性格的に真面目な選手に多い傾向ですが、そういう栄養や水分補給も含めて包括的にアプローチしていく必要はあると思います。

 逆にオーバーワークでパフォーマンスが低下してしまう例もありました。中心選手のビッグマンの動きが悪いからといって、コーチがその選手をとにかく走らせていたのですが、一向に動きがよくならない。そこで血液を調べたら、慢性的なオーバートレーニング症候群であることが判明したのです。その後、練習中の水分補給をこまめに入れたり、練習量も体調に応じて調整していくと、体調もプレーの質も戻ったということがありました。

 このようなことは中高生レベルでも起こり得る例とも言えます。

中高生年代だからこそ意識してほしい栄養補給

――吉田さんは現在、Bリーグのトップチームで指導を行なっていますが、一般的な学生、例えば中高生に対して、コンディショニングについてアドバイスいただけることはありますか。
吉田 まずは運動をする前に、栄養を摂っているかを確認することです。トレーニングする前にちゃんとした栄養が(体に)入っているか、食べているか、1日のトータルでちゃんとエネルギーを摂取できているか。

 高校生ではその日の授業が終わってから部活まで、あまり時間がない場合も多いと思いますが、だからと言ってお腹が空いている状態で、栄養補給もせずにそのまま部活で3時間くらい体を動かしてもいい効果は生まれません。十分な栄養が入っていない状態で運動量だけ増えても、体は大きくならない、コンディションもよくならないというのが典型的な悪循環の例です。

 練習量のコントロールはもちろん必要ですが、ある程度量のある練習をしたい場合は、やはりそれだけの量の栄養(エネルギー)を、練習前後などのタイミングをちゃんと考えておかないといけません。

――放課後の部活を中心に活動する選手の場合、栄養を摂取するタイミングはおおよそ運動し始める何時間ぐらい前などの目安はありますか。
吉田 消化がいいものであれば、運動を開始する1時間前が理想ですが、30分前でも消化のいいものを何か摂ることは必要だと思います。

 学校のルール次第ではありますが、例えば最後の授業前の休み時間などを利用しておにぎり1個を食べておくだけでも、何も食べないよりはいいと思います。

 部活までの時間がどうしても十分ではない場合には、『カロリーメイト ゼリー』のような、1本でバランスよく栄養が摂れるものを飲んでおくだけでも、かなり違います。もちろん、それだけの栄養補給で2〜3時間の練習にもつかは疑問ですが、何もないよりはいいと言えます。

――練習前の栄養・糖分補給について例を挙げていただきましたが、ジュニア世代の指導者や保護者がコンディショニングについて、どのように子どもたち、中高生に指導していけばよいか、何かアドバイスはありますか。
吉田 そうですね、やっぱりちゃんと食べる習慣を身につけること、なるべくリズム(周期)を変えずに摂ることを前提に、選手自身に意識的に食べているものについて把握してもらうことは重要だと思います。

 10代の子どもたちは、運動したあとはやっぱりお腹が減るので、いっぱい食べるじゃないですか。たくさん動けば、たくさん食べたくなる。すごくわかりやすい。そのなかで自分が今日食べるものにはどういう栄養素があるのかを学んでいってほしい。

 情報や知識はどんどんアップデートされていきますが、新しいものがすべていいと言うわけではありません。特にスポーツのための栄養と日常生活を健康に過ごすための栄養は違います。例えばおいしい食事に油で調理されるものもあるように、体にいいものもあれば、悪いものもある。

 そうした環境に今はあるので、指導者の方々もスポーツ栄養に関して学んでいってほしいと思います。

大塚製薬の商品は選手の状況に応じて適切なものを摂取できる [写真]=須田康暉

大塚製薬千葉ジェッツは製品サポート契約を締結しており、大塚製薬が吉田SPD(当時)に依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています。

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